プライベート/伊織
タバコの味のするキスは
久しぶりだった
待ち焦がれていた瞬間が
こんなにも
やすやすと手に入る
夢なの、
問いかけた唇を
あなたが封じ込めた
大きな手のひらは
私の胸に沿ってまるまり
そのまま
膨らみを潰しては戻る
唇は執拗に首筋をなぞり
耳の後ろをかすめては
また唇に戻る
どうして、
浮かぶ小さな疑問は
波にさらわれて消えた
コピー機の横
すれちがう距離1m
ベッドの上
交わす視線12cm
から
0cm
他人に、なれる?
「戻れない」
そしてまた
あなたが 私の領域に入ってくる
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