森へ/佑木
 
自分が嫌いなように 君を嫌っていたのだろうか

僕はある日 落ちぶれて森へと逃げてゆく

森は少年の頃のように けもの道が続いている

その道をひとり 僕は進む

朽ちた枯葉は堆積した心の葉を沈める

君は僕に気づく そして不意に隠れてしまう

その悲しげな目と 後ろ姿を残し

僕らは森で生まれ 森で育ち 森を捨ててきた

森は君を受け入れ

僕を拒絶しない

君は昔のように 自由に森を駆け巡る

僕は知らない君の 影を見る

風は木々を揺らし 落ち葉は鳴くように舞う

過去と未来の冷気をぼくらは歩いて来たのだろう

そうさ

まぶたを開ければ 携帯アラームの喧騒

生活のくぐり戸の 重く軋む呼び声


森へ


森へふたたび還ってゆこう 

ほこりまみれのこころ擁いて

鉛色のその瞳のままで

そこで なつかしき君の

足音と微笑みに出会う

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