待つひと 待つこと/HAL
 
帰る場所を失ったとき
だれもが待つひとをなくしたとき
それはそのひとがもうこの世界に
存在していなかったことを意味します

私にとってあなたを待つことは
私の生きる欠けがえのない力でした
そして私は気がついたのです
いま待っているのは私ではなくあなただと

そんなあなたにいま私が逢いにいきます
だれかに寄り添うことはなくても
淋しくはない人生でした
充分に意味のある人生でした

そして私は瞼を閉じます
もう一度開けることはないことを知りながら
私は瞼を閉じます

そのときに私は待っているあなたがはっきりと
視えることに私は間違ってなかったと知るのです
そう
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