雪片/佐野権太
 
何もないところから生まれて
ふりそそぐ雪片
その結晶の
ひとつひとつを確かめたい
純粋で
静かな構成に
私は憧れる

かつて卵だったころ
なにも知らなかった
幸せも、不幸も
ただ無垢に構成された
ひとつの器官だった

跳ね上げられた泥に
汚れてしまった手を伸ばす
どこからやり直せばいいですか
かなしみが空から剥がれ落ちて
ほっ、と消える

レンズを閉じれば
重なってゆく
かすかな音だけなる
何もないところから生まれて
ほっ、と消える
私の残像が
静かなものであるといい






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