古い社の杜/月形半分子
アオバヅクの卵はどうなっただろう
春にきまって森にやってくる夫婦ものたちの事だよ
親鳥たちが子育てに忙しく飛びまわり始めると
森ではいっせいに羽化が始まるからね
まさにこの時こそが春の到来のすべて
私はオニグモ、この古い社の杜の住人
知っていたかね
私はこの春をずっと心まちにしていたのだ
腹にたんまり糸を溜め込んでね
私の自慢の捕帯も調子がいい
さぁ、とっておきの場所に巣を張るとしよう
ごらん、私の最初の糸が風に乗る
きらきらと きらきらと
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