桃色の泡を吐き出す世界ではみどりの魚も赤く熟した/木屋 亞万
 
あの人が舐めるナイフの冷たさを頬で感じた(栗山千明)

実感がないというより年末の実感自体実在すんの?

泣き止めば殺さずにすむ恋心みどりの魚も赤く熟した

たましいになってしまえばたましいのさけびくらいはすぐにできるさ

取り返すことのできないものばかり油まみれの胃が溶けていく

唱えては「明日があるさあすがある」今日をあきらめ明日にかける

死にたいと言ったお前の身代わりに死ぬ私から目を離すなよ

昨年にやり損なった大掃除今年中には終わらせたいね

眠ろうと目を閉じるたび五七五言葉が整列して笑ってる

遠くでは今日も赤子が泣いている犬は吠えるし猫は戦う

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