「きみ」「あなた」/乱太郎
 
 「きみ」  乱太郎

どこかで会っているよね
そんな問いかけをしたくなった
きみの黒い瞳

いつだったか呼んでくれたよね
そんな昔話しを思い出したくなった
きみの褐色の肌

僕を忘れないでね
なんどもさようならした最後の挨拶
きみはうなずきまた消える
そしてまた現れる
影の無い世界できみとぼく

未来という言葉さえ忘れ去られた
いつまでもきみとぼく



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 「あなた」  蒼風薫

どこかで遭っているわね
そんな悪寒がしたの
あなたの黒い腹

いつだったか呼び捨てられたわよね
そんなムカつきを思い出しちゃった
あなたの錯覚の恋人

わたしを忘れてよ
なんども言ったのにかかってくるこれが最後の電話
あなたはうなずきまたかけてくる
そしてまたかけてくる
頭髪の薄いあなたと豊かなわたし

過去という言葉でも消えない
いい加減にしたいあなたとわたし

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