銀河鉄道の(来ない)夜/ソリッド町子
銀河鉄道がだれを連れていくのか
それは誰にもわからない
わからない
銀河鉄道にさらわれてしまうのを
リコは一晩中待つ
待っている
銀河鉄道が来るとき人は眠っている
誰も起きてはいられない
いられない
リコだけが目を覚まして待っている
だが鉄道は来ない
来ない
石英は砕かれて夜空に張り付けられるという
それはエス、アイ、オー、ツー
蠍のアンタレスが赤く光るってさ
それはエー、エル、ツー、オー、スリー
そしてシー、最後にアール
みんな銀河鉄道に乗らないか
「砕かれてしまえばいいと思う」石英のように
「血だったらいいと思う」アンタレスの赤が
リコは真暗な夜に身を投げたくて仕方がない
だが銀河鉄道は来ない
来ない
行ってしまってはいやだと言えばリコは泣く
その目の中に宇宙
あまりにも美しいから
私はときどき
リコの頭が砕けてしまえばいいと思うのだ
まるで石英のように
だが銀河鉄道は来ない
来ない
リコの目の中だけに宇宙を残して
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