ソーダ水/中川達矢
 
デパートの屋上で
メロンソーダ、いや、
クリームソーダ
そのこぼれおちた泡が、水槽の海を知らせる
午前零時、
マッチの先は折れていた
極限の闇は、明けていく、
午前一時、
柱時計は壁から、鐘をひとつ鳴らして揺れる
六畳間が、六畳間が、大変です、六畳間が、
メロンソーダ、いや、
クリームソーダの泡で
午前二時になっていく頃
もういい加減、眠って
口から出た泡が
午前八時
跡形もなく、唇に残ったように
昨日と繋がっている今日が
背中にくっついて、あとを追っかける
午前九時
メロンソーダの緑を
瞳孔に残したまま、家を出る
クリームソーダの泡は、
デパートの屋上の水槽の海で
餌食になっていた。

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