恋を夢見る女の子/オキ
 
ションの、五階くらいまで昇ったとき、
「何よ、エッチ!」
 とまたも罵声が飛んできた。
 今時の子どもは分らない。これでは結婚して子どもが出来るのも考えものだ。
 彼は休憩とはならなかった児童公園を後にして、営業へと戻っていきながら、待てよ、と足を止めた。発した自分の言葉の不具合に気がついたのだ。コグぞでは、恋が欠如している。コイであげますよ。こう発声しなければならなかったのだ。
 女の子に言葉の訂正を申し出て、最初から、
「恋で、あげますよ」
 でいこうとして踵を返すと、ブランコは空っぽで、その先に、マンションに向かって エッチ、エッチ、と叫びながら駆けていく女の子の後ろ姿があった。
 彼は再びブランコを背にして、今度は並足を駆け足に変え、大通りの雑踏へ姿を消した。




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