この海の底にとどく光/ねことら
ティッシュペーパーをちぎってちらしたような薄い雪が、スローモーションのように降っていた。制服にマフラーだけじゃ寒くて手をこすったりしてるとユウトが毛糸の手袋を貸してくれた。わたしの手には大きくてぶかぶかで、ユウトの汗で少し湿っている。
街をあるくのは好きだ。冬の晴れた日はがらんどうのなかにいる気分になる。顔もしらない大人のひとたちが横断歩道を足早にわたっていくのをみていた。
ユウトといると気持ちが安定する。濡れた脱脂綿がしっとりかさなるように、わたしたちはお互いの呼吸をたいせつに、まとまりながら下り坂をまがっていく。
封鎖線。JRの線路沿い
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