赤いポストと遠い夜/千月 話子
昔住んでいた家の近所の円柱形のポストから
私に 手紙を出したいんです
近くには小さな神社 小さなトカゲが住んでます
土を掘って数センチ グレーの粘土質の柔らかい土が現れて
ころころころと 団子を作って遊びます
こま犬が2匹 静かに遠くを見ています
その側に 懐かしい火の見やぐら
一度も鐘を鳴らすこと無く 平和な日々
4階建て位の高さから 見下ろす景色は
ハッカ飴のように 爽やかな風が吹く
川の水面と桜の木を 揺らしているのだと
見上げる目が 羨ましそうに想像したりしています
高い煙突が空まで届きそうな 銭湯の下駄箱は
いつも 真ん中辺りを選
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