風邪/葉leaf
 
実家の二階にある寝室、家具の匂いが強い部屋で、幼かった私はしきりに咳をしていた。肺から何もかもを洗い出し絞り出すかのように激しい咳をして、掛布団を小刻みに揺らしていた。脳を巡る血液は熱く、著しく濁っていて、私の表象を霧で満たした。私は熱にうなされながら悪夢を見た。大八車の片輪が壊れて、積まれてある砂のような荷物が無残にも辺りに崩れ落ちる夢だった。それは何か私の心を重く突き刺し、強度の悪意でもって取り返しのつかなさを主張する夢だった。咳はもはや鈍く濁ったものではなく、鋭く何かを呼び起こすようなものになっていた。そんなとき、私は死が安らかに自分に訪れてくるのを感じたものである。死は恐怖のようにざらつく
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