NOX/すみたに
 
 夜夢見る前に見えるんだ
 溶けたチョコレートのような
 天井が頬に垂れて来るのが。
 ナメクジに両目を覆われて
 ふるい落とそうとする首が
 枕から頃げ落ちていき、
 床でゴム毬のように弾ける。

 透けていくのか
 浮いていくのか
 消えていくには変わりない
 トラックにはねらる感覚
 階段から踏み外す感覚
 気付いた時には、輝かしい薔薇が
 咲き誇っているのを待っている、
 初夏のテラスに座るレモネード、
 その先の丘で畑を耕す。 

 そしてさようならと告げる口が
 逃げだした夜中の病室
 お前だったのか
 と、止める術もない
 掛ける声をもたな
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