独りさすらう/たもつ
独りさすらう俺の体を
降りだした雨が切り刻む
切り刻まれた俺の体は軽く分裂する
でも心は切り裂かれないから
浮いたまま
雨に打たれても
俺の心は乾いちまってる
おまえがいないから
乾いちまってる
こんな日は古傷が
おまえに会いたいと泣く
おまえを抱きしめたいと泣く
でも軽く分裂してるから
おまえはきっとすり抜けていくだろう
俺を追い越す車のテールランプが
雨に滲んでせつない
そしてそつがない
しかもつつがない
そんなあいつは美人局
おまえの代わりにはなれない
軽く分裂した体ごとに
涙が流れて
それぞれの頬を濡らす
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