牡鹿の告ぎ/黒ヱ
寒波が襲来
「それは 陽子と電子が告げた」
風花を焚く 冬の冷香
月夜だけがそこに在る
俯きながら 雄弁は実らず
雪に 傘をさす
「泣き顔が とても簡単に思い浮かぶから」
それが!
半身暗む 黒烏は切る
冷たい風 口笛のせて
(六角形の結晶が語る)
「それ! 中外の点々よ! 嘆く緑線を切る!
胸舐り! 胎を突き! 十戒喚き!
飛ぶのさ!」
芽吹き あの温もりの手はまだか
「まだか!」
地に在る葉は螺旋し
二人を繋ぐ 見えぬ弧は二度と張られぬ
黒む思想は灯を欲し
また知らぬ香を炙る
欠ける 細る光りが地平線を蹴り
消え行く 天涯を望む!
「それでも 傘を廻し 待つのさ
片身を 委ねてさ」
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