チョーク/10月/イシダユーリ
して
もいいのよそして卑怯者と言われてもいいのとあなたは言ったあなたは風
景をからだに映したまま目を細めたここはいつも夏ここはいつも夏揺られ
ながら眠る脂肪
わたしがあそこに吊り下げられているとあなたは指さす
触りに行ってきてと指さす
いやだ と言うだけなら 警察はこないね
わたしは 歩きながら 顔を歪める うつむく 空をみる
目をこすって
仕方なく
花は枯れず
凍る
一面の
夏
一心に
伸ばされる
舌
振りかざされる
首
飛沫
指が欠けている
わたしの
ことば
陽を
返す
さらされた
脂肪粒
足りないもの
を
撫でる
渇き
いってしまった
ここは
いつも
夏
藍色の
水着が
カモメを
撲殺できるほどに
凍って
ひらついて
いる
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