チョーク/10月/イシダユーリ
 
そこはいつも夏だった
降りしきる雪
枯れずに凍るひまわり


雪には構造がある
対称は
一瞬で
駄目に
なる
その分生まれる
土を覆いつくすほどに
それが耐えられない

あなたは言った


細い指で
細い煙草を
吸っていた
あなたは
廃線になった駅で
ホームから押し出される
影 だった
仕方なく笑う
仕方なく笑い続けたら
誰かが
殴ってくれるんだよ
頭の後ろを

かんなくずのような
人波が透けて
あなたの煙草の火が
見える
あなたは
うつむいている
思い出したように
立ち上がるその時
まで


ここはいつも50年代
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