マイケルジャクソンの青空/月形半分子
マイケルジャクソンの青空
アスファルトの上で街は目覚め始める
排気ガスとパンとコーヒーの匂い
新聞配達夫の帰り道には
怪物のような建築現場がある
鉄骨の群れが朝焼けのなかで
黒い森のように高くそびえている
夜明けから青空までは早い
その躍動のなか
建築現場で働くひとりの男の心から
音楽が鳴り響く
巨大なクレーンが雄叫びをあげて
空高い鉄柱がスピーカーのように共振し
男の心が空に突き抜けていく
太陽がいっきに燃えて
青空の上で誰かが指を鳴らし始めた
電車は線路を軋ませ走りだし
一斉に鳴り出すクラクションの音
何万と動き出す人々の足音がリズムを刻む
男の心からも街からも
ラジオのように音楽が流れ続けている
この青空の下では
鉄さえもマイケルを忘れられない
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