役者志願/まーつん
 
この世界は
俺向きじゃない
ルールが飲み込めない

悲しくない時に泣いたり
嬉しくない時に笑ったり

そうして俺たちは関係を築いていく
当たり障りのない関係を
赤ん坊だけが自分に正直で
あとのみんなは役者志願

大根役者は嫌われる
舞台がスムーズに回らないから

俺は愛を知らないけど
知ってるふりをし続ける

俺は優しさを知らないけど
冷たいこの手を差し伸べる

胸の内にある籠に囚われた
喜びという名の鳥が
羽ばたき 騒いでいる

怒りという名の虎が
腹の奥へと続く洞穴を
のしのしと歩き 唸っている

悲しみは 萎えた白熊となって
眼窩の
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