多分、これで 最後/赤青黄
い水溜りの底へと落ちていった
クラクションはブレーキを踏むことはなく
前方から迫る車の息吹に瞳孔を窄めた男の体は
華麗なムーンサルトを描きながら
ガードーレールに衝突し
カラスが水溜りとガードーレールの間に
糞を一つ産み落とすのであった
朝もやの立ち込める、朝
男は立ち上がり
手や足などの被害状況を正確に分析していた
赤は点滅の役割を終えて
いつしか黒にしぼんでいたようで
そこは新たなカラスの灰皿になっているようだった
男は一つ背伸びをした後で
交差点の中央に立ち
少しだけ世界を儚んでから
全てを終えて帰っていった
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