氷原に舞う塵/まーつん
 

ミミズに頬張られ
木々に吸い上げられ
冷たい雪解けの水が流れる川床に 沈殿していった

人々が笑いさざめいている
毛糸の帽子をかぶり
マフラーに 赤く上気した頬を埋めて

氷原を歩く彼らの肺が吸い込む空気の中に
橇を引きずる子供らの産毛にとどまる塵の上に
雪の下に木の実を見つける小鳥の熱い腸に住まう細菌の中に

僕はいた

僕は死んで
世界の一部になった
だけどその思考は生きている

生きて考えている

凍てつく三月の山に立ち尽くす松の樹皮に潜り込む毛虫の細胞の一つとなって
暗い波を掻き立てる海流の懐に漂うプランクトンの一つになって
野を駆ける野生馬の鬣(たてがみ)にまとわりつく蚤の一匹になって

僕は考えている

憎しみから自由になり
優しさを忘れ果て
欲望の気配を感じ
恐れから遠く隔たった場所で

僕は考えている




考え続けている











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