氷原に舞う塵/まーつん
 
雲が僕を抱きしめてきた
その胸元には雨の匂いがして
雷を飼ったその腹が ゴロゴロと唸りを上げていた

霙(みぞれ)が僕に口づけをしてきた
全身に冷たい唇を這わせて
シャツの下までびしょびしょにすると
道端の側溝を ざあざあと流れ去っていった

霧が僕を食べてしまった
歯のない口をモヤモヤと開いて
この身体を心ごと 景色から掻き消してしまった

針葉樹たちはじっと立ち尽くし
烏(からす)たちが梢で騒いでいる

そして 風が僕をまき散らした
見渡すばかりの氷原の上に
たくさんの白い煌めきが
陽射しを受けて燃え上がる

僕の粒子は
土に染みこみ

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