冬の夜のベンチで/三田九郎
 
冬の夜

街灯から離れた暗がり

こんなにも遠かったんだ

喜びも悲しみもちりばめた星空

カルガモが音もなく泳ぎ

湖面に浮かんだ月が揺れる

語り合うことも

言い合うことも過ぎ

寒すぎて

寒い とも言えず

湖に面したベンチで

僕らはただ黙っていたっけ

沈黙

言葉なく寄り添う時間が

育むものもあるんだね

その夜

沈黙はしばらく続き

いつしかベンチはぬくもりを帯び

湖面の月は幾度か揺れ

星たちは瞬いた
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