風俗考 幇間の部/salco
 
わけで。

 社会の枠組の中で、自己を「曲げ」続ける事で生活基盤を構築・維持して行く常道を肯えない彼らオミズ男子も、生活力がなけれ
ばたちまち見限られるスタンダードを生きざるを得ない。しかも女子部と違い、その年齢的猶予期間がヒジョーに短い。二十八を目
前にヘルプに甘んじ、落ち延びる先に北赤羽のスナックもありはしないのだ。夜な夜な交際費で飲み歩き、イケメンどころの芸者に
酌される上機嫌をステータスとするような女性が、人口の5%でもいれば話は別だが。
 夜の隅っこで人気者となり、膵臓か肝臓がやられる前に経営(実業)側へ転じる輝かしい成功譚が、こうして自分には階梯や高尾
山でなく蜃気楼だったのだと悟り、大きな回り道をして「堅実な仕事」のふり出しまで戻るわけだが、そこにはやはり学歴と職務経
歴が立ちはだかる。
 檻に眠らせ閉塞に吼え猛る、人間の雄性ほどの悲劇があろうか。

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