海一粒の砂粒/すみたに
 


 海中を漂う砂粒が、潮流に弄ばれながらも、時には魚の口から鰓へ抜けながらも徐々に沈んでいく。天に在る日輪がその姿を鏡に映している、その鏡である美しい海面から離れて黒い海へと沈んでいく。それは途方もないほどの時間をかけて、行き着く場所を訪ね歩いている。深海には何が待ち受けるのだろうか、冥府だろうか絶望だろうか。違う。もっと善きものがあるに違いない。ほうら、光のない世界なんて嘘じゃないか。奥底には星が瞬いている。深海の女王が優しく腕に抱いているではないか。不安なく恐怖なく、ただ身を重力に委ねて沈んでいけばいい。
 海を眺める少年がいる。少年は浜辺で一人横になり、思い立ったかのように駆けだした
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