日記詩/月形半分子
日記詩
(一)
真昼の銀行、キャッシュコーナーの長い列は
金にまつわる一喜一憂を分かち合うかのように寒いほど静かだ
これはまさに近代の儀式
笑っても泣いてもいけない参列者たちは
残酷な神が哀れな生け贄を選ぶ瞬間を
ただひたすらに恐れながらもこの儀式から逃れようとはしない
知っているのだ。一度離れたらもう二度とここには戻ってこれないことを
この儀式は隷属を願う者たちの哀しい祈り
その身を投げ出しては
100円硬貨に、千円紙幣に、一万札に
はいつくばるように永遠の隷属を誓う
真昼の銀行のひと隅で
生け贄から逃れられた者たちは
紙幣が機械から吐き出されるさまに恍惚として
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