flower adjustments/水町綜助
くひかる
焼け野はらを夢想したけど
それを見つけることはできなかった
ぼくたちは酒を飲んで
人々と話をして
道を尋ねては
いつもとかわらない夜を過ごした
赤い光の中で
引っ掻き傷のように
何本もの線に
輪郭をほどいて
踊るあなたは
過ぎ去った夏の匂いがした
ここにかかれたことは
ぼくたちのなんということもない虚実ないまぜの日常と
そのことをぼくがおもいだして
いくらか加工して書いてみただけ
というものだ
もちろんそれ自体、第三者のだれかにとって意味があるわけはないし
ぼくたちの過去を懐かしむものでも
後悔するものでもないし
ぼくたちの未来や、時間以外のなにか、を暗示するものでもない
まして、いま一字を書く、この瞬間をなにかになぞらえたものでもない
ただあるのは、ぼくがこの散文とも手紙とも呼べず、日記でもない文章を送ろうとしている女
そのひとに、いつものように
眉がしらをひそめながら
なきだしそうな顔をして
ぼくの目を見てほしいだけなのだ
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