「痛みの記憶」/桐ヶ谷忍
 
歯の神経を抜いても
たまに何日間か痛みがある事があるという
神経は抜いたのに

それは痛みの記憶
抜いた神経の周りの神経が痛みを覚えていて
少しの間痛みを訴え続けるのだという

神経はもう無いのに



車が走る
運転席にはあなた
助手席には誰か座っているだろうか
座っていると良い

もし不在で、代わりに
死んだ私が座っていたとして
あなたはいつまで私を座らせておくだろう

それもまた、痛みの記憶、として
あなたはいつまで
その痛みを訴え続けるだろう

私はもう居ないのに

戻る   Point(1)