雨が連れてくる/ふたば
 



水道管から聞こえてくる
遠くから雨がやってくる
おとなたちはおしゃべりをやめて
会えないひとに手紙を書き始める

ラジオが音楽を止める
もう雨は近くまできている
眠っていることの方が多くなった老人も
子どもたちとおんなじ夢を見始めた

取り得なんてなかったけれど
旅にならよくでたものさ
一週間がまだ十日で過ぎて
一日は三十時間あった頃のこと

雨の音は校舎のなかを
詩集の余白で一杯にする
まだお昼をすこし過ぎたうちから
たくさんの放課後を持ち寄って

女の子は誰もいなくなった
交差点で信号待ちをしている
信号機はずっと変わらないまま
なつかしい旅人が通るのを待っている

ずっと前に忘れていたような
そんな雨が降ると

公園の茂みに立っている
銅でできた男の子も
おかあさんの待つところへ
急ぎ足で帰っていくよ




 
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