車窓の詩/すみたに
車窓はいまだ固まらず
七三キロにえぐられる
ぐにゃりぐにゃりと 鐘がなり
平たく 延び縮みした思いが
頭をぶちつけ 眼より飛ぶ
まどろみからはみ出す黒枝の
茂みの青い光をかきむしる
車窓は細かく毛羽立って
黄色い鉄路のひまつは
綿毛となって風塵と舞い
過ぎゆく景色に垂らされて
朱色の長手が放していく
黙読の、カラリとした声
カラリ カラカラ、懶惰な響き
強引に 運ばれる絵筆が、こすれ、
繊維の粉末が薄く積もった
透き通る耳が砕け落ち
燦爛とした――
電車の揺れに合わせ
翻る、陽光がつり革を潜り
空いた座席に影を踏む
隣で幼子が視線を
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)