ティータイム/月形半分子
熱い琥珀色の紅茶に角砂糖を溶かしましょう。睡眠薬がわりに疲れたミルクが、銀の容器のなかで一休みしていますから。
街は人のことなどまるでお構いなしですね。くつろぎの傍らを、電車が疾過していきます。カラスが、もうすぐ西日が走ると一鳴き声をあげて空へ飛んでいくものですから、裸木と目が合ってしまいました。空の色はコンペイ糖の色と、いつかもう一度言ってみたいものです。手工業の街のありとあらゆる車輪は、止まることを知りません。西日がさしてきた喫茶店で檸檬をしぼりましたら、あたりに飛沫が散って、紅茶からはいつもと同じ轍の味が致しました。今、街は眩しいばかりです。
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