国境スープ/たもつ
国境線の上に魚が死んでいた
線に沿ってナイフで切ると
両方の国から猫がやって来て
半分ずつ咥えて行った
近くでは国境線を挟んで
男たちがチェスをしている
自分の陣地は真ん中まで
そこから先には入れない
祖父は国境線について
我々を守ってくれるものだと言った
父は大切な約束だと言った
祖母は綺麗事だと言った
母は寝室で一人
昨日も泣いていた
線をまたいだテントウムシが
警備兵に右脚を撃ち抜かれた
男と女が国境越しに
愛の言葉を囁いている
触れることがなくても
伝わるものは
必ずあるはずだ
夕食だろうか
一足先に夜が来る向こう側から
美味しいスープの匂いがする
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