終わりの旋律/田中ましろ
 
弱弱しい斜陽を受けた
メタリックグレイの弱弱しい孤島に
眩暈を感じてその場に崩れ落ちる

同時刻に大量に発生した孤独の群れが
道路も線路も下水道も大気をも支配して
宇宙全体の調和を乱そうと試みている

僕は上も下もわからない錯乱状態の中
可能性の渦に飲み込まれる自分の体に
まだ腕と足がついていることを必死で確認する

つい先刻まで隣にいたはずの
つい先刻まで手にしていたはずの
ぬいぐるみはもう300m先の空
メタリックグレイ

融け始めた世界には
始まりと終わりの旋律が響きわたる

まだ
腕と足はこの世界に存在しているようだ
時間が生き物だったことを思い
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