駅景/田中ましろ
ど数分後にはまた別の電車が入ってくるから
べつに乗り込まなくてもいいんじゃないかと思ってしまう
ぼくの前では
まだ40には届かない母親が
まだ5つには届かない娘の手を取って
同じようにまた次の電車だけを待っている
(次の電車は永遠に続いていくけれど)
(次の電車がこのホームに入ってくることはない)
アナウンスが遠くに聞こえた
ハウリングして不快に聞こえた
きけんせ(ガー)ははいじょされま(ビィー)た
もういつ(ガー)もいえにかえっていい(ビィー)すよ
次の電車が前の駅を発車したらしい
同じ色をした同じ鉄でできた
アイデンティティ不足の次の電車が
前の駅を発車したらしい
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