戦闘少女、戦闘少年/片野晃司
 
 襖で仕切られた四畳半の、その襖を開けるとまた四畳半、また四畳半、大きさの異なる箪笥がいくつもあり、埃避けの布を掛けた雛壇があり、その隙間にすっかり平たくなった綿布団があり、そんな部屋が前後左右に際限なくあって、そこでいま僕は少女である。どこかで襖を次々と開けて駆けていく物音がする。足音から裸足の足の裏が生え上がり両足のあいだから尿の匂いがする。そしてまた別の尿意が遠くで襖を開けて駆けていく。そしてまた別の尿意。開けて襖、そしてまた襖、箪笥、雛壇、布団、尿の匂い。いま私は男の子である。横切って襖、横切って襖、荒々しく足、荒々しく股、荒々しく腹、荒々しく胸、荒々しく腕、荒々しく指、荒々しく尿意、そう
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