ともだち/片野晃司
 
ホームを切り裂いて列車がページを捲っていく。同色の
制服に制服を重ね着してずきずきと圧密する、頭痛がちな
通勤電車のようにきつく綴じられた紙の隙間を押し開き、ぼくと
膝頭から胸元まで触れるほど巧妙に組み合っているきみに、この
前のページの出来事をぼくは教えないし、この
次のページで何が起きるかもぼくは教えない。たとえば

《永きにわたりご愛顧いただきました言語ではございますが》

ぼくたちを充満したこの通勤電車が鉄橋を渡り、腰つきの
丸みを帯びた川筋沿いに小さくなっていく精密の先へ視線を辿ると、雁行して
近景から遠景へと追い越しながら高速度できみと並走する、鈍色の
ふたつの
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