夜明け前の目醒め/すみたに
煙を出さなくなった工場の軒先で
ウールのベールが群れなして失せ、
熱線が迸り出た。裸体のまま曝された
石は砕け、散った、降った、青い羽根が
ハンチングに突き刺さる。
そしてまた羽ばたき、木立で囀り始める。
カーテンが開かれた、あなたの手で、
眼醒めの曙光が映し出される、
蛍光灯の寝不足を解消する、
部屋の物たちは充足し始め、笑い、
空気清浄機の鼾は愉悦に替わる、
それはまるで駅に進入する列車のようだった。
機関銃を触ったことないわたしが
蜂蜜を舐める熊に変身する夢を見た
正六角形の岩窟の奥闇で
実在感を増してゆく蝙蝠が唱えている、祝詞は
永久に止むことなく、遠く今もまだ語りかけられている、
山際の真っ赤な夕焼けの中で、あなたの耳元で眠る私に。
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