雪を巡る二篇/すみたに
 

潔白な残雪をこそ愛さん、
残雪は陽に当たりて玉の如く輝く。
雪は清水を滲ませ具に燦めく肌整え、
芽吹きを助く恵みを与く、
涙の結氷種子を愛づ、
黒衣の無児、杖付き雪原踏み歩く、
傘を傾け陽を覗き、一息腹から歌を発つ、
雪融け新風訪ねるを、彼讃じて曰く、
我は潔白な残雪をこそ愛さん、と。




夜の帳が降り、
月は雲に隠れても、
雪は光る。穏やかに虹色に光る。
昼間氷塊に閉じ込めた陽射しを、
分解しながら放射する。
動きが止まり、時間の止まった
水石英は闇の侵攻に破れ砕ける。
熱さえも沈思から覚め頽廃の情念に暴れ出す。
雪は幻光を抱きながら蛋白石の肉体を崩壊させる。


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