白紙の日記/御飯できた代
「何をするでもなく、ただ、白紙を埋める。その作業に没頭したのは、どうしようもなく不安だったから。心の端から端まで、黒く、赤くして、なんでもいいから空虚の色を残すことがたまらなく嫌だったの。それをわかってくれる?」
真剣なまなざしで、八重子は言った。切りそろえられた黒髪が、蝋燭の光で艶めかしく光っている。病的に白い肌は暗闇からぼぉっと浮かび上がる。血色の悪い頬に、炎がほのかな紅を差して、いつもよりはふっくらとして見えた。
「そんなこと言ったって。これは僕の日記帳じゃないか。こんな、何日も先が真っ黒だったり、真っ赤だったりしたら、いくら能天気な僕だって不安にさせられてしまうよ」
芳郎は
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