ひしゃげた空缶/すみたに
握り潰され、踏み潰され
ひしゃげてしまった空き缶の中には
まだ誰かの生が底に残っている。
それがそのまま
路肩に投げ捨てされて転がっている、
溢れたゴミ箱から滑り落ちている。
木漏れ日の中一つを拾いあげる、
それは一点より拡大し、一点へ収束する
極地上の市場を流通する、
赤白黒の炭酸飲料の空缶、
耳当て、振ってみれば懐かしむ声がする、
太古へと脈脈と続く潮騒が聞こえる。
だが回収業者の仕事は早かった
清掃活動から、街中から、
果ては、
海の向こうに流れ着いたもの、
砂漠で干からびたもの、
密林で骨と化したもの、
ボイラー室で焼かれたもの、
講義室で
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