果てがない影/すみたに
世界に伸びる影は 果てがない。
高層ビルは嘗て草原だった土地の上で立ちはだかり、
飛行機は嘗て届かぬ雲の上を滑りゆき、
断崖絶壁から人間は歩きはじめる。
鷲が飛ぶように 影は大地を離れ 果てがない。
黴が生えてから 蒼穹は剥がれ落ち始めた。
黒く浸蝕されて 星空も塗りつぶされていった。
青いろに照りつける破片は クレーン車に吊るされ、
大地に突き立てられ 海底を埋め立てていく。
小さい欠片はみな側溝に掃かれ 物好きの抽斗に隠されていく。
舟人が風を失い 潮から逸れ行き 波は鎮まる。
壁が部屋を失い 扉は飾りとなり 見つめる人は何処か立ち去る。
眼が
[次のページ]
戻る 編 削 Point(0)