或る赤い星/レイヨウ
 
ニコーンをみた



「止めてほしいの?」

少女のまだ傷んでいない毛先が
肩に触れたり触れなかったりしながら踊る。


放っておいてくれ


少女はそのまま
僕に背を向けた
砂埃が少女を包んでも
その青は色褪せない

無垢とは、いやはや、力強い


棒切れのように細く白い足には
小さなかすり傷が無数に散らばっている


「君がお爺さんになったら
白いバッファローが迎えにくるよ」


少女の声は
水を失ったこの土地に
青々とした言葉を浸透させる


迎えになど来ない
僕はここですべてを殺すのさ

「殺せないよ」

殺せる
君はまだ幼いから知らないだけ

「しってる」


振り返ったその目には
海がみえる
森がみえる
街がみえる
人がみえる



思い出した
君は



「このちっぽけな惑星ひとつ
飲み干したら月においで」


少女は何にも使えないような
ビー玉を僕の手に転がした


遠く、
波がまたひとつ死んだ





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