異国の浜辺で/すみたに
 
  ひとつ、
           もうひとつ

コンクリートの靴先で 座った神の竿先誘う
口を閉ざしてかからぬよう
岩礁迷路に色ばかり 
  美しい
   カサゴははためき 肉と鱗でうち上げられる
 陽が開き 星は波際で攫われた
緊漠の境涯の如く 止める術もなく
浜辺さまよう 足跡の上に足音つけて
        ひとつ、
         もうひとつ  だけ

一枚貝のかぶさった  足跡ひっくり返す
消えてしまった 一瞬見紛う 光彩を放った雨傘
 巻貝に耳を当てても
 異国の浜辺を歩くわたしには
 なにも鳴りやしなかった
聴こえたのは 
 声、遠くから呼びかける
   応じても通じないことが
  分かっている 近くで見てもそっくりな二人
 海辺には、異邦人ばかりが集まって
        ひとりも
       ひとりたりとも残らない

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