夢に見るのは過去だけだ/イナエ
 
上空を通過する物音で目覚め カーテンを開ける
暗い夜景が流れ込む窓に 目を見開いた未来が
こちらを見ている

慌ててカーテンを閉じ 再びベッドの倒れ込む

 わたしの見たいものは薄くなった未来などではない
 春の野に 蕩々と流れてきた過去の
 きらきらした波頭 陰など消してしまう輝き
 どこにあったのか 何であったのか
 とうに忘れた栄光

 空を舞う銀色の縁取られた綿毛の雲
 を眺めている二人の抱擁
 何度もおぼれかかった危機を
 する抜けてきた過去の人生

今では 未来には祈りさえない

戻る   Point(3)