朝から/すみたに
 


朝起きなさいと叩かれる畳
撒きあがるダニの死骸
目覚まし時計は横虐に喚く
 「それは布団から出る事とは違う」
 「ベルを黙らせれば済むことでもない」
   けれど彼らは毎朝毎夕起きられない
   頬に一発喰らってもむずがるばかり
    寝惚けて彼らは言うだろう
    「夢からは醒めることなどできない」と。

その日のおしゃべりと
天気を尋ねる挨拶が
食卓に大皿に乗って並ぶ
「喉を震わせて舌をもつれさすとも
あくびを放つこととも違う」
  けれどバネをのんだ喉
  赤面発汗 噤まれた彼らの口
   口籠って彼らは言うだろう
   「よく噛んで食せば黙るのみ」と。

人の言う事に耳を傾けよと
渡された日付の翳んだ切符
球のりの曲芸師が綱を渡るサーカス
 「やさしく心音を確かめたなら
 流れるものがわかるだろう」
   枯れかけた海を懐かしむ
   耳は綿の飛び出たぬいぐるみ
    けれど震えあがった頸筋は示すだろう
    「確かに生きているのだ」と。

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