色彩へのコラージュ/草野春心
 
 遊戯のように繰り返される
  緑色光に濡れた
  蛇のぬけがら



 (gift)

  あなたに一冊の本をあげます
  あなたに紅茶の葉っぱをあげます
  あなたに真っ赤なリボンをあげます

  あなたに街はずれの美術館をあげます
  そこに佇む、ひろびろとした静寂をあげます
  言葉と、いかめしく変色してゆく歴史と
  あっけらかんとした忘却をあげます
  夏の日の涼しさをあげます
  冬の日の温もりもあげます
  わたしには多すぎる

  場所もしらないどこかのドアの
  古惚けたひとつの鍵を
  雨降りによく似合う
  長ぐつのようなさりげない歌を

  溢れる歓びを
  ほとばしる怒りを
  やりきれない矛盾を
  勇気を
  恥じらいを  
  あなたにあげます
  それから
  あなたにあげたすべてのものを
  焼きつくしてしまうような
  凄まじい炎を}




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