感謝の起源 (高2のころ)/鈴置友也
 
ひとりでしずかにしているとき、空になった心を涼しい風が吹き流れてゆくような沈黙で満たされているとき、ぼくははじめてぼくひとりになる。思い出でなく、希望でなく、ただ今のぼくとしての意識、その空虚なつめたさ。肌寒い冬の大気に躰をさらして、その胸の痛みを改めて嚙みしめる。そうすることで、ぼくは自分というというものがとり戻される気がする。いろいろな人への言葉がとめどもなく、あふれてくる。感謝の気持ち、ぼくの気持ちのすべてだ。
つめたそうに目を細めて、はるか彼方を瞠めていたい。へだたりの深さだけの感謝を人に伝えてゆきたい。ぼくの身振りひとつひとつに、これらすべてのつめたい痕跡を滲ませていきたい。あらゆる感謝が、この傷からあふれてくる。あたたかいぼくの血液のように、とめどなくあふれてくる。
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