冬のおわりに デッサン/前田ふむふむ
 
          
喪服を着た父が 部屋の隅にいる
悲しいほど 
とても暗い場所に
かなり寝たので 夢だったのか ひどく汗ばんでいる
耳をふとんにあてると 父が階段を上ってくる気配がした
胸が 訳もなく とても痛い 
でも ドアは 開くはずがない 
父は もう二十年前に死んだのだ

あたまを動かしたら ズキンと痛んだ
下着を替えて 冷却シートを貼りかえり すこし落ちつく
枕元にある体温計を わきの下にあてる
熱は 朝より 下がっていた

母の明るい声がする
おもては 雪が降っているらしい

階下の居間では 慌ただしく 何かが落ちて割れた
一週間前に買った 高
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