マギのマスク/鯉
目からたばこが生えた
煙がおれの目だ
「人を愛せ」の「人」という字が
燃え盛っている
灰皿が
重油とタンカー
ガソリンは蒸気が燃える
トイレの個室と遠く離れた
廊下であったり
駅のホーム
連結器
棺の窓
おれたちの心臓
注射器の真空
実は
港は近いのだ
歯車のように遠ざけているのだけど
目の前が燃え盛っている
気化熱(70パーセント分の)
海の直角で
積荷を降ろしている人
そいつはおれの置き去りにしたおれで
けれどそうやすやすと逃げ切れず
名前で交信している
汽笛
錨の上げられる音
煙の前で立てられる音
目に巻かれたのに
これだけ見えるのなら暗闇と同じで
そのくせいちばん太陽が近くてこまった
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